「日々新たに花を愛でる」 (2001.1.1掲載)

ついに21世紀を迎えました。私自身20世紀の前半に生を受けて人生の約4分の3を過ごし、21世紀に余生を送ることが出来そうです。今まで多くの人々に接してきましたが、新世紀に入っても新しい出会いを経験することが出来るでしょう。ところで唐の有名な詩人による「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」という詩があります。これは花は毎年同じように咲くが、人は年ごとに変わって行き、生まれる者あれば死ぬ者もあるという、人の世の移り変わってはかない様を不変の自然に対比させたものです。そこで今回は世紀の変わり目にちなんで、長い間の人々の多様性や変化に対して一見変化を感じさせない花をモチーフにしてまとめました。ここにご紹介するものは昨年夏以降、自宅や街路など路地にあるものを描いたものですが、花は上にあげた唐詩に示されたようにいつ見ても同じように感じられます。私の葉書絵は昨年暮れに1300点を超えましたが、これからも制作を続けて充実した21世紀を過ごしたいと思っています。

「今夏は2輪」:(2000.8.28)

私の家のサザンカの生け垣の間に昨年から百合が咲き始めました。恐らく種子が近所の家から風か鳥に運ばれてここに自生したものと思われます。昨年は1輪でこのページでも葉書絵で紹介しましたが、今年はこのように1本の茎に2輪の花をつけました。少しやせていて茎も花もスリムでは有りますが、なぜか花の向きが完全に左右に別れてしまっています。明年も21世紀初めての花をつけてくれることを期待しています。さあ何輪咲くかが楽しみです。
「初秋のオジギソウ」:(2000.9.22)

東京中央区の職場近くにある小学校で見かけたものです。そばにいた先生に花の名前をたずねたところ「オジギソウ」とのこと。家に帰って図鑑で調べましたがこの名前では載っておらず、結局正しい名前は解らずじまいです。直径1.5cm程のビロードの玉に例えられる、綿状で淡いピンク色の花が何とも言えない可憐さを表しています。小学校や幼稚園の花壇にはふさわしい花です。茎の高さは1m程度で葉は「ねむ」に似ております。
「初秋のキキョウ」:(2000.9.25)

自宅の庭のあちこちにキキョウの株を植えており、毎年夏から秋にかけて紫の花をつけ私たちの目を楽しませてくれます。私には特に花びらから浮き上がる血管状の線が印象的です。しかし9月も終わり頃になると花の時期が過ぎてこのように茶色の種子が残り、変わった風情を感じさせます。
私はキキョウを過去何度か描きましたが、何か変わったモチーフをと模索してやっと捕まえたものです。新世紀のキキョウの絵にも自らの期待を込めたいものです。
「オタフクナンテンを楽しむ」:(2000.10.3)

東京中央区立スポーツセンターの庭に植えられています。花ではありませんが朱色や緑色の可愛い葉を付けて群生する矮生ナンテンは、それだけで公園の一角を飾るにふさわしい植物です。この絵は秋本番に入ったある昼休みの光景を描いたものです。大きくて派手な花と異なってあまり目立つことがないので訪れるサラリーマンも少なく、楽しんでいるのは自分を含めてほんの数人といったところです。「オタフクナンテン」は私の図鑑には載っておらず、この植物が茎や葉はナンテン系であるものの「オタフク」の語源は解りません。
「薬研堀不動院のチョウセンアサガオ」:(2000.10.5)

先回のこのぺージで紹介した「薬研堀不動院(やげんぼりふどういん)」の庭に植えてあります。正式な名称はこの植物が幹になるので「キダチチョウセンアサガオ」と言うのだそうです。この花は「アサガオ」の名前に反し夕方咲いて朝しぼむというのが特徴で、朝気がつくと下に向かってしぼんだように見えます。この花を見かけだしたは最近ですが、今やあちこちの家や菜園の角でよく目にするようになりました。花の大きなこととあいまって成長が非常に早いので、いずれ始末に困る時が来るかも。
「野本さんちのコエビソウ」:(2000.10.18)

この花も最近になって見かけるようになりました。花の形や大きさが「コエビ」に似ているのでこのように命名されており、英名でも「Shrimp.Plant」というそうです。この植物の花は先端の白い(この絵では黄色に描いてある)部分で、赤い部分はこれを包んだ葉の一種のようです。皆同じような形をしているものの、右や左に曲ったり上や下を向いたりでしばらく見ているとなかなか妙味を感じます。図鑑では夏の花と出ていますがほとんど年中咲いているようで、今後鉢植として人気が出るものと思われます。珍しい花なので私も是非手にいれたいと思っているものの一つです。この花の持ち主の野本さんは私の職場の近くにある染め物・洗い張り屋さんで玄関先に植えてあり、通勤途上毎日勝手に鑑賞させて貰っている訳です。
「隅田川畔のピラカンサ」:(2000.10.19)

昨年6月に東京中央区の職場に移って以来、付近を流れている隅田川畔には何度も足を運びました。秋になって散歩の途中気がついたのがこの木です。ピラカンサというのは固有名詞ではなく、秋にこのような赤色や黄色の実を付ける「ヒマラヤトキワサンザシ」、「タチバナモドキ」などの総称だそうです。このように小さくて赤い実を結ぶ植物は日本的な印象が強いため「ピラカンサ」というカタカナ名は何度聞いても記憶出来ず、それぞれの日本名を知って納得できた次第です。この木は「ヒマラヤトキワサンザシ」だと思いますが、実があまりにも細かすぎて特徴を表現出来ませんでした。
「隅田川畔のハマナス」:(2000.10.20)

上の絵を描いた翌日の作品です。やはり隅田川畔の「ピラカンサ」より下流側で見かけました。最初見たとき花・実・茎の刺の状態などからバラの一種だろうと感じましたが、「ハマナス」らしいと知のは自宅の図鑑でです。ただ「ハマナス」は北海道・東北地方などの寒冷地の植物とのこと、隅田川下流の暖かい地域でも咲くのかどうか多少疑っています。そういえば数年前妻と北海道旅行して知床かどこかで見かけた記憶があります。北海道の花や図鑑に載っているものは花びらが一重ですが、ここの花は八重ですから改良品種だと思います。丁度熟した実が多くついていましたので、自宅に植えてみようと数個持ち帰りました。
「五条川の萩」:(2000.10.24)

秋になると自宅から数分の五条川では、桜並木にまじってところどころ萩の開花を見かけます。桜の紅葉までにはまだ間がありますが、彼岸花が終わり菊の開花を待つ間のひとときを楽しませてくれます。もっとも花が細かく特徴がないので関心が無ければ見過ごすものですが。しかし秋晴れの下で、赤紫の小花が細い枝にひしめくようにしがみついて精いっぱい咲いて、秋風にゆれるのを見るのは風情があっていいものです。萩にも多くの種類がありますが、この種のものは最もよく見かける花だと思います。
「ウキツリボク」:(2000.11.3)

一昨年の冬だったかにお隣の家で頂いた一鉢を地上に下ろして約1年、見る見る成長してこのような楽しく可愛いい花をたくさんつけてくれました。名前は誰にたずねても分からず、図書館で探し回って見つけた英国王立園芸協会出版の「プラントフォトガイドシリーズ・低木とつる植物図鑑1000」をひもどいてやっと解り感激した次第です。「ウキツリボク」という名前の語源は不明ですが、釣竿から糸を介して吊り下がった浮きを連想させるのでこのように付けられたのかも知れません。最近あちこちの庭などでよく見かけますが、成長がかなり早くて私の家でもすでに2m近くになりました。花には蜜がありそのためか小蟻が付着するほか、茎にも多くの油虫が生息しています。この花は四季咲きとのことで2つの世紀をまたいで花を楽しめそうです。また支柱を大きくする必要がありそうですが。
「野菊に蜜蜂」:(2000.11.4)

自宅の庭に遠慮気味に咲いた野菊。種子がどこからか飛んで根づいたものです。描いていると花に蜜蜂が止まりました。飛び去る前に絵に加え、花の淡い紫と蜂の茶色の取り合わせを少しでも出そうとしましたがあまり目立たないようです。昨年秋テレビで野菊など1万株以上の野草を育てている方の紹介番組を見ましたが、野草は人工的に改良などを繰り返したものとは違って独特の味わいが感じられ、その魅力に取り付かれる気持ちも解るような気がします。
「我家の庭・秋を謳歌」:(2000.11.6)

自宅の庭を賑わしくしている花木をまとめて描きました。もちろんこのような配置はないので合成です。黄色い花のツワブキはどちらかと言えば時期遅れながら散るのを我慢し、真ん中のセンリョウは小さな株から赤くて可愛いい実を目立たせている、その手前に万年青(オモト)がしっかり鎮座しているという感じです。これらの花々は別々に位置しているので、万年青の出番を作るための創作です。
「秋・スズランの実一つ」:(2000.11.13)

自宅の庭にはかなり多くのスズランが群生しています。もちろん最初はどこかで貰った数株でしたが、今では5月頃に多くの花が咲いて風物詩となっています。ここの品種は北海道ものではなく野生に近い種類のようです。ところで昨年秋実を付けたのに初めて気が付きました。橙色の実で直径1cm程のもの1個だけです。葉はかなり枯れ始めていますが実のほうは相当長い間軸に付いています。この実も2つの世紀をまたいで残るかも知れません。
「華麗・秋に残る」:(2000.11.13)

ダリアは私の子供の頃からなじみある花で、当時は大体紫色が多かったように記憶しています。最近はこれらの花がファッションショウよろしくこのように花びらの周囲の一部を残して真っ赤に着色したものなど、華麗というか華々しい感じの花が増えています。この花は畑の角に咲いていたもので、珍しい色合いだ思って描きました。ところが同じ模様の花があちこちにあることが解ったのと、ダリア自体が夏から秋にかけて長期間にわたって開花していることに驚きました。このような花が畑や庭の一角に自然の姿で咲いていることに本当の美しさを感じます。
「秋のシンボル」(2000.11.13)

秋の花の代表格は何といっても菊です。私は今までかなり多くの花を描きましたが、本格的な菊を描いたのは初めてではないかと思います。というのは菊自体どこでもあり何時でも描けるという気持ちと、一部の鉢植大輪などを除けば花びらが多いだけで特徴に欠けるという先入観によるものと思います。しかし描いてみるとなかなか味のある作品になります。最近絵手紙を始めた私の妻が私の葉書絵が絵手紙にくらべてはるかに細かいタッチであることに感心し驚いています。描いてみて新たな刺激を受けましたので、今後も新しい感覚でトライすることにします。
「冬接近・サザンカ開花」:(2000.11.25)

この冬も自宅生け垣のサザンカが満開になりました。サザンカは一般に真冬の花ですが我が家では11月中旬に開花し始め、正月にはほとんど満開の状態です。私の葉書絵には何度か登場していますが、実際の花は今年は例年より大き目ですので今回は多少アクセントをつけたつもりです。サザンカは咲いているうちはよいのですが、特に八重の花ははしぼんだ後茶色になって落花するのが難点です。21世紀に入っても同じように開花落花を繰り返すことでしょう。
「ヒイラギの可愛い花」:(2000.11.927)

自宅には2種類のヒイラギがあり、1種類は刺のある葉、もう一種類は丸い葉のものです。これは刺のある方で、葉の形状とは裏腹に細かくて親しみやすい花を付け、しかも快い匂いを放っています。花の大きさと形状は秋口に咲くキンモクセイによく似ています。ヒイラギは花より刺のある葉に関心が集まりますが、よく見ると花はなかなか親しみやすく見ていて気持ちが落ち着きます。ただキンモクセイやヒイラギは花が小さいので葉書絵のモチーフとしてはいずれもイマイチです。
「20世紀最後の秋に」:(2000.11.30)

秋を代表する花を畑で見かけましたのでこのように描いてみました。白と濃い紫の菊がまとめて植えてありましたのでそのままスケッチしたものです。茎や葉の色も多少花の色に似て濃淡がはっきりしています。菊の開花期間は非常に長くつぼみも次から次と出てきますので、その生命力には圧倒されます。この花をスケッチしたついでに2本ばかり失敬して自宅の一輪挿しにさしてあります。
「オオバジャノヒゲの初冬」:(2000.12.7)

12月が1週間過ぎようとしています。もう21世紀まで1ヶ月を切ってしまいました。花や実はカレンダーよりも外気温度などによって表情が変わり、この植物も今はこのように直径数mの黒い実を付けています。これは一昨年春岐阜県武儀町の古くて由緒ある高澤観音近くの山で採って来たもので自宅の鉢に植えたもので、いわゆる「リュウノヒゲ」の一種です。非常に成長力のある植物で、直径約30cmの植木鉢が隠れてしまう程にまで大株になっています。
「師走の顔」:(2000.12.9)

最近初冬になるとあちこちの庭や花壇で目にするパンジーです。よく見るとこのようにひげを付けた人間の顔か、犬のマルチーズの顔に似ています。現在では多くの色がありそれぞれ滑稽な表情をしているうえ、真冬には雪の間からも顔を見せることがあり見ていると楽しくなります。花の大きさが次第に大きくなっているので、ますます人気がでてくるものと思います。