「紅葉に遊び、すぐまた冬に」 (2003.1.1掲載)

あけましておめでとうございます。また新しい年を迎え、齢60代半ばにもなると1年の短さをしみじみと感じます。それでも新年ですから自分なりに今年への期待と残る人生の過ごし方などを考えてみるひと時を持ちたいものです。ここで掲載する葉書絵としては新年にふさわく明るいものをと考え、昨年秋以降に描いた作品をご紹介することにしました。昨年は猛暑から急に秋になってしまったため、紅葉は山間のみならず平野部においても例年になく鮮やかで、絵のモチーフは多くありました。そこでワンパターンながら印象深い風景をまとめた次第です。

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「日比谷公園噴水の向こうにビル群」:(2002.11.5)

都会は建物の空調や車の排気ガスで大気温度が上昇するため、紅葉もかなり遅れます。ここでは11月初めとしては珍しく落葉樹が少し色づいてきたという感じでした。日比谷公園の噴水も風を受けて周囲に飛び散っていますが、近づいた私でもあまり冷たさを感じることなく描きあげることが出来ました。前方の高層ビル手前の茶色い建物は日比谷公会堂で、まだ緑に囲まれて秋の気配はいまいちという感じです。

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「鬼岩公園・水が枯れた松野湖」:(2002.11.9)

昨年夏は猛暑が続いた上、比較的多く発生した台風もほとんど関東沖を北上したため中部地区は渇水に見舞われ、貯水が減って底面まで干上がった池を多く見かけました。この池も本来なら紅葉が水面に映って趣のある秋景色が楽しめるはずですが、この絵に描いたように池の斜面にある大石までがごろごろと姿を表してました。こんな状況ですから折角の紅葉も見物客は私と妻以外はほとんどいないという有様でした。

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「すすきと紅葉」:(2002.11.9)

上の絵の後ちょっと変わった光景を見つけて描きました。逆光を受けて濃い紫を帯びたもみじをバックに花粉がつき始めたすすきどもが思い思いのポーズを作っているようです。それにしても寂しい光景で、早い冬の到来を予告しているイメージさえ感じられます。

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「餅をつく男たち」:(2002.11.9)

11月9.10日の2日間は地元岩倉市ふれあいまつりで、私の自宅から数100mにある広場の会場には2〜3千人と思われる市民が集まっていました。ほとんどは屋台やバザーばかりですが、このように餅をついて配るイベントもありました。無料であるため多くの人々が出来上がりを待ち、つきあがって握られた餅は瞬く間になくなっていきます。中には何も度並んで飯の足しにしている人もいたようです。

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「岩倉太鼓をたたく少年少女」:(2002.11.10)

岩倉市には岩倉太鼓保存会があり、小中学生によるグループも編成されています。この絵では数名しか描けませんでしたが、実演は30名以上ではなかったかと思います。なかなか撥さばきがうまく良くそろっていました。この演奏の後保存会婦人部メンバーによる勇壮な?演奏も披露され楽しませてもらいました。
saidan.jpg 「紅葉を冠した「裁断橋行碑」」:(2002.11.13)

裁断橋は、愛知県豊田村(現大口町)で生まれ小田原の合戦(1590年)で18才で最期を遂げた堀尾金助の霊を弔って母親が名古屋市内の精進川にかけたものここ愛知県大口町の五条川に復元したものす。そしてこの橋の南側には、現在中部電力会長の太田宏次氏がこの由来を七言絶句五首の漢詩に詠み、それを刻んだ碑が建てられております。私が裁断橋と漢詩碑を描いたのは過去2回あり、それぞれ葉書絵「桜」・「五条川・岩倉桜まつり」として紹介しておりますが、秋の紅葉を描いたのは初めてで少し気負って描いております。
horioseki.jpg 「堀尾跡公園にて」:(2002.11.13)

ここは上の絵と同じ堀尾跡公園の一角に設置された野外ステージを裏側から見たものです。6本の石の塔は何を指しているのかわかりませんが、紅葉とそれに硬い表情で向き合った石塔が面白い対照を示しております。あるいはこれら石塔の前に立ち強い寒風に向かってて瞑想にふけるのも何か精神修養になるかもしれません。
koyo.jpg 「寂光院の紅葉に向う」:(2002.11.16)

寂光院は継鹿尾山(つがおさん)八葉蓮台寺といい、犬山市北端の木曽川に面した山上に建立されています。ここの紅葉は有名でテレビでも紹介されるそうですが、私がこの紅葉を見るのは初めてです。あまり大きな山ではありませんがお寺の境内いたるところに多くのもみじがあります。ここは名古屋からも非常に近いので多くの人が紅葉狩りに来ており、紅葉をバックにしたグループ写真や三脚に望遠レンズつきカメラを載せて風景写真撮影などに夢中になっている人を多く見かけました。
jakkoin.jpg 「寂光院の紅葉を楽しむ」:(2002.11.16)

境内の一角にある、おそらくここで尤も鮮やかで品の良いもみじです。残念ながらそれぞれの建物の名前は知りませんがここでは紅葉が主役で、本当に燃えるような紅に見物客は異口同音に「すごい」と感嘆の声を上げていました。それにしても植物という生物が、自然界のルールに従って人工以上の色彩をかもし出すことに改めて驚きを覚えます。
syoro.jpg 「紅葉・鐘楼を隠す」:(2002.11.16)

樹木自体はさほど大きくはありませんが、小枝の先々まで付いた真っ赤な葉が鐘楼を覆い隠すように広がっています。遠くから見ると、葉の表面は陽光を反射して枝ごとに大きな赤い凸面鏡を形成しているように思われますが、近くによって葉1枚1枚を見るとそれぞれが微妙な色の違いをみせており、そこがもみじの紅葉の不思議さかも知れません。
oyada.jpg 「紅葉映える大矢田神社山門」:(2002.11.23)

このお宮は岐阜県美濃市にあり、境内の周囲はもみじ谷といってこの地区ではかなり人気がある場所のようです。私自身もみじのシーズンにここを訪れたのは初めてですが、紅葉ももそろそろ後半であるにもかかわらず3連休のため見物客のマイカーで最寄の駐車場にも入れないほどでした。この門は地方のお宮の門としては風格があり、少し淡い紅葉と門の渋い色の対照が何ともいえません。
amazake.jpg 「初冬の甘酒横丁」:(2002.12.6)

東京日本橋の甘酒横丁にも冬が訪れ、街路樹はこのように黄色に覆われてきました。この界隈はおそらく戦禍を受けて再建された商店もあるでしょうが、街路樹もここ数十年の年輪を重ねながら町の盛衰と往来する人や車の変化を眺めてきたことと思います。間もなく葉も落ち尽くして幹が厳冬に耐える風景に変わることでしょう。
kokugi.jpg 「師走の両国国技館」:(2002.12.10)

このあたりへは私の職場から徒歩30分弱で行くことが出来、久しぶりに足を伸ばして見ました。当然今は場所が休みでひっそりしていますが、初場所のチケットを求める人がちらほら売り場に来おり、すでに初日・千秋楽・中日などはかなり売れているようです。しかしこの不景気を反映するように升席はまだかなり空いていました。
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「寒風晒す柳橋」:(2002.12.10)

神田川にかかる橋のうち隅田川に最も近い橋です。隅田川の両国側堤防から遠望ました。まだ午後1時半頃ですが、冬の太陽が南側に傾き木枯らしも吹いて、川岸のビルにはさまれた橋の鉄骨がが一層冷たく感じられます。橋の下には水面の青色に抗するように赤い船が1艘、手持ぶささにつながれているようです。
ningyo.jpg 「人形町・初冬の陽光」:(2002.12.12)

甘酒横丁から北に伸びる散歩道の入口にあるアーチです。この日は晴れ上がってアーチの表面が初冬の陽光を受けてまぶしいほどでした。以前この道の風景を何度か描いておおり、すべて暖かい時期で植樹や花々の間を散歩したりベンチに掛けて昼食をとるモチーフが多かったです。さすがこの時期は行き交う人はまばらで、落葉した木々とともに忘れられた存在という感じです。