「春陽漸く強くやがて桜花を開く」 (2003.4.15掲載)

今年の春は3月下旬に開始された米・英国によるイラク攻撃や中国・香港における新型肺炎の蔓延など、世界的な社会不安につながる大きな出来事が発生しました。しかし植物などは自然環境の変化にのみに反応し、人間の気持ちに安らぎを与えてくれています。また今年は3月中旬頃まで寒さがやや厳しい感じだったので、春の訪れが多少遅れるのではないかなどと気にしていましたが、桜の開花はほぼ例年並にやってきました。今回は3月初めから約1ヶ月間にあちこちで目にした自然の営みを中心に描いてみました。幸い多くの風景や題材に接することが出来たので、自分としては面白いページが構成できたと思っています。

「のぼりを作る老夫婦」:(2003.3.5)

私の住んでいる岩倉市内での光景です。この家は「のぼり」の老舗で、このご夫婦はおそらくこいのぼりを手がけているものと思います。まだ桜のつぼみが固いこの時期に、春先の陽を浴びながら大きな白布に黙々と色を塗っていく姿からある種の自然と人間の調和が感じられました。また後方建物の中には大漁旗も見えます。4月上旬の五条川桜祭りのイベントとして、ここのご主人たちによる五条川での「のんぼり洗い」の実演は圧巻です。

「冷雨残る仙台青葉通」:(2003.3.8)

私が親しくしていただいている東北大学工学部の内田教授が3月末で退官され、その記念祝賀会に出向いたついでに描いた1枚です。仙台はまだ真冬で、みちのくの遅い春の訪れを実感した次第です。過去仙台へは数度行っていますがいずれも暖かい時期であったので、青葉通の街路樹のこのような淋しい姿を見るのは初めてです。また当日は土曜日の朝で人通りもまばらでした。

「冠雪の乗鞍岳を望む」:(2003.3.11)

岐阜県関市南部の山道から望んだ乗鞍岳です。丁度空が晴れ上がり雪に覆われた山がはっきりと見えました。このような光景に接することが出来るのは冬の3ヶ月間ほどですが、描けるチャンスが少ないので貴重な1枚になりました。デジカメ写真も撮りましたが、あまりにも遠方すぎて肉眼に比べると迫力はイマイチです。またこの場所から見ると乗鞍岳のはるか右手に御岳をはじめ中央アルプスも一望できます。手前の町並みは岐阜県中濃地区だろうと思います。

「土手に咲くショウジョウバカマ」:(2003.3.19)

この花は普段お参りする迫間不動の境内近くで見かけたものです。満開になると花の茎が10cm以上に伸びますが、このときはまだ茎が見えないほど葉に密着しています。また他の野生の花が殆ど咲かないうちにあちこちで見られるのも春の訪れを告げるにふさわしいと感じさせます。私の自宅庭にもかなり生えていますが、葉の幅がこちらより広いうえ色が茶色っぽいので土壌の違いなどによる影響があるものと思っています。

「岩ぼたん満開」:(2003.3.20)

自宅庭に数株生えているものを描いてみました。淡い紫の花が1本の茎に密集し、それなりに愛らしさを感じさせます。しかし節くれだってわさびを連想させる根は、石垣など悪い生育条件に耐えるよう頑丈に出来ているかもしれません。また花が咲いていない時期には全く人の目を引きつけない、これもまたこの植物の特徴のように思います。
「長誓寺・しだれ桜満開」:(2003.3.30)

長誓寺(ちょうせいじ)は一宮市街の東北部にあり、ここの本堂は名古屋城三の丸にあったある重臣の書院を1874年に移築改造した由緒ある建物のようです。尤もこのお寺については私自身その存在を全く知らず、ここのしだれ桜が見ごたえがあるとのことを新聞記事で知り出かけた次第です。なるほど相当年を経た古木から垂れ下がった数mもある枝が隈なく花をつけており圧巻の一言に尽きます。多くの花見客が感嘆の声を上げながらカメラを向けていました。
「しだれ桜と石燈籠」:(2003.3.30)

上の絵と同じお寺です。手前の男性的な?石灯籠と、これに柔軟な枝を覆いかぶせるように広げたしだれ桜の女性的な部分との対照が印象的でした。花が散った後には手前の枝(桜ではない)の若葉も加わって新しい光景が見られるでしょうから、そのときにも来てみたいと考えています。
「団子を求める人達」:(2003.3.30)

長誓寺近くの小さな食堂です。丁度昼食時であったのでこのように花見客が集まってきました。私も妻とともにここでみたらし団子を買いました。また多くの利用者をさばくために高校生のアルバイトらしき若者がたこ焼きをひっくり返しているのが印象的でした。尤もこの近くには魚釣りが出来る浅井山公園もあるので、真冬以外は結構商売になるだろうと思います。
「柳枝湖面を覆う」:(2003.3.30)

浅井山公園の一角です。池の周囲には柳が数多く植えてあり、一部の大木はこのように水面に枝を伸ばしています。そういえば池や湖の周囲に植えた木は、一般に日光が当たりやすい池の内側に枝を伸ばすものだと聞いたことがあります。またこれらの若葉は春の日光を受けて穏やかな姿を見せ、行き交う人達の心を和ませてくれます。尤も池の周囲には多くの釣り人が座って水面を見つめ、柳の風情など無関心のようでした。
「桜花越しに姫路城を望む」:(2003.4.1)

出張で兵庫県相生市に行ったついでに途中下車して姫路城を見物しました。このお城へは昨年2月にも来ていますが、時間が少なかったのと絵を描くのが目的だったので外回りに留めました。そこで今回は城内を足早に巡回しついでに桜の絵を描くと言う、かなり過密なスケジュールをこなしました。ただ桜は少し時期が早く大部分の木々はこの絵のように三分咲き以下という感じでした。満開であればもっと豪華な感じの絵になっていたかもしれません。手前の屋根は門の一つで桜と城のバランスに面白みを加えたつもりです。
「姫路城に葉桜を見る」:(2003.4.1)

この絵は回廊の窓から桜を通して見える櫓を描いたものです。城内にはこのように花より葉が先行した桜がかなりありました。姫路城は約10年前の1993年12月に世界文化遺産に登録されるなど、その歴史的文化的価値は多くの人達から認められています。そこで私は城という固定された概念とこれを取り巻く四季折々変化する風物との対象を、部分的ながら観察し表現してみた次第です。
「岩倉・山車の競演」:(2003.4.6)

今年も4月1日〜10日の間五条川桜祭りが行われました。最近のテレビ報道で、五条川の桜は名古屋周辺で最も豪華であるとの報道を目にしました。その影響もあったかどうか、前日の雨が上がって多くの花見客でごった返していました。ところでこの日全市に3台しかない山車が揃い踏みを行いました。それぞれのやぐらの上で演じられるからくり人形のしぐさが観衆の目をひきつけています。私自身これらの山車の絵をこのページでご紹介するのは3度目だと記憶していますが、もっと躍動的に表現出来ればよいと感じています。
「五条川・桜満開」:(2003.4.6)

昨年は気温が高く推移したため桜まつりの期間には花が相当散っていた記憶がありますが、今年は丁度満開近くの状態になってくれました。ただ前日の土曜日が雨だったので、この日にまとめて花見客が殺到している感じです。川の土手では親子連れがこのようにたむろして弁当などを食べております。この時期にはまだ花が散る状況でなく、水面の花びらもまばらでした。3・4日後には水面全体がじゅうたんを浮かべたように花びらで覆われてしまうものと思います。

「ハナモモ花を競う」:(2003.4.7)

東京の職場近くにある浜町公園で見かけたハナモモの植え込みです。直径数mほどの面積に紅色・桃色・白色の3種類、高さ数mの花木がそれぞれ数本ずつ植えられ、お互いに競っている感じです。桃の1種であるため花は梅同様枝に密着しているので全体としてはこじんまりとした感じです。桜のように軸の部分(花柄というらしい)があれば、もっと賑々しく感じられるだろうと思いました。公園の一角のまとまった植え込みであるためか、行き交う人の多くは立ち止まって眺めていました。
「浜町公園・桜花と娘たち」:(2003.4.7)

浜町公園のこの部分は1年ほど前までは池と芝生の土手でしたが、このように桜を植えてかなり様子が変わりました。これらの桜は植樹して間がなく花自体も少なめですが、このように若いOLなどが手すりに持たれて食後のひと時を過ごしていました。そういえば浜町公園は桜が少なく、大きな体育館を取り巻く風景に潤いが感じられなかったので、今後初夏から秋にかけての深緑などを含めた景色はサラリーマンの落ち着ける憩いの場として利用されることと思います。