「梅雨に醸し出された緑を愛でる」 (2003.7.20掲載)

今年の梅雨入りは中部・関東地方で6月10日でした。それ以来殆ど毎日が雨天か曇天で、しかも長引いているのでうんざりしている人は多いと思います。しかし梅雨は植物にとってはまさに天の恵みです。野山はもちろん街中の樹木や花は生気に満ちた表情を見せています。今回は5月末以降梅雨の間を通して眼にした建物・水・花たちの、鮮やかな緑との絡み合いを自然の姿として描いてみました。

「池袋西部デパートを望む」:(2003.5.30)

池袋駅東口が通じている西部デパートを南東の道路から描いたものです。このデパートは経営不振で話題になりましたが、池袋の顔の一つとして営業は続けられています。建物中央の垂れ下がった植物と道路両脇の街路樹の緑がこの建物を目立たせております。
「安田火災海上ビルを望む」:(2003.6.5)

地上部分が曲面状に広がっていて、昔から西新宿の高層ビル群の中でも目立った存在です。高さは丁度200mで、もう25年以上も前の1976年に建てられ、2002年まではこのような名前でした。しかし現在は「損保ジャパンビル」に変わっているので、この地域のホームページではこの名前は見当たりません。今から20年ほど前の東京勤務時代、夜新宿で飲んだあとこのあたりを歩いて宿舎の東中野へ帰ったものです。初めて描きましたがやはり「安田火災海上ビル」の方がなじみがあります。

「ふどうの森・水辺の花木みちにて(1)」:(2003.6.6)

私たち夫婦がよくお参りする迫間不動を取り巻く「ふどうの森」には、いろいろな名前がつけられた散歩道が縦横に走り小川や可愛い滝を見ることができます。生い茂った森の中は大変涼しくて歩いていても心地よく感じます。またこの小川には他所では最近殆ど見る事ができない「さわがに」なども生息しており、このような生き物を見るのも大変心が癒されます。

「ふどうの森・水辺の花木みちにて(3)」:(2003.6.6)

上と同じ小川で描いた3枚のうちの1枚です。川沿には季節柄アジサイなどが咲き乱れ、水辺にはこの絵のように花しょうぶなども自生しております。広々した花畑に植えられた多くの花とは違って鮮やかな自然の姿を実感することができます。また水量はやや少なめですが梅雨に入ると増水しこれらの小さな滝が見えなくなるものと思われます。
「レストラン「日比谷パレス」」:(2003.6.9)

日比谷公園の一角にあるレストランを描きました。日比谷公園には「松本楼」と言う老舗がありますが、このレストランも店構えなどから見ると由緒ある店だろうと思います。丁度昼食時でサラリーマン風の客が出入りしていました。街路樹の丸みのある緑と建物の茶系の壁や窓の対象が絵画的です。
「バラと噴水・日比谷公園にて」:(2003.6.9)

日比谷公園には洋風と和風の2つの噴水があります。この絵は洋風の噴水をバックに咲き乱れるバラを描いたものです。緑の中の噴水の躍動と手前の深紅のバラは好対照です。日比谷公園では数多く描いていますが、ここは季節などによってモチーフを選べるのが私をひきつける理由の一つです。ただし公園の外周には次々と高層ビルが建築され、公園が次第に狭く感じられるのは残念です。18日のNHKラジオ深夜便での女優松島トモ子さんのインタビューで、彼女が3年ほど前から日比谷公園のホームレスと接触をしており、ここには学卒や公務員リタイアー・リストラ・離婚暦など種々背景を背負った約100人のホームレス(他の地域とは違ってエリート集団)が住んで?いるなどの話をされていました。普通のサラリーマンと思われる人のなかにはホームレスもいるとの事、日比谷公園を行き来している人々の生き様を垣間見た感じがしました。
「名古屋駅太閤通口付近にて」:(2003.6.11)

ある日の午前JR名古屋駅の新幹線側広場で眼にした光景です。彫刻の作者については記録していませんが、以前にも描いたことがあり女性像としては力強い作品です。今回はその彫刻のそばで時間をつぶしているらしい2人の男との対照として描いて見ました。彼らはこの彫刻をどのように認識しているのか、ここの広場には類似する彫刻などはなさそうなので彼らのサロンとして利用しているのでしょう。
「「のぞみ51号」・名古屋駅にて」:(2003.6.11)

名古屋駅新幹線下りホームで、自分が乗る予定の列車の前に入構した700型を前面から捕らえました。この列車の先頭部分ははいわゆるロングノーズでかなり長いですが、正面に接近してみるとこのようにうなぎの頭のように滑稽な形状をしている反面、少し古いタイプの新幹線に比較すると、スマートすぎて冷たい感じもします。
「水辺の花木みちのアヤメ」:(2003.6.22)

梅雨が本格的になった6月下旬、例の「ふどうの森」で目にしたあやめの花です。この花が咲いている場所は小さなダムの端で、後方は水面です。これらの花も数株があるだけで、静かにひっそりと咲いていると言う感じです。春から夏にかけて花しょうぶ、あやめ、かきつばたなど良く似た花が咲き競いますが、最近は改良品種もかなり出ているようで花の大きさなども種々あります。
「タイサンボクの花・ふどうの森にて」:(2003.6.22)

タイサンボクはモクレンと同属で、葉はモクレンよりやや小さくて堅く花びらもモクレンより肉厚の感じです。印象としてはタイサンボクが男性的、モクレンは女性的です。私自身タイサンボクの名前は知っていたものの、この花がタイサンボクであることをはじめて認識した次第です。
「ガクアジサイ・浜町公園にて」:(2003.6.23)

東京の浜町公園の一角に植えられているアジサイの目に留まったものを描いて見ました。一般にアジサイは花を相当拡大して描かないとピンボケになりますが、その点ガクアジサイは花と額縁(この部分は花ではなくて装飾花というそうです)がはっきり分かれているので描きやすいです。2ヶ月ほど前に読んだ新聞によると、アジサイの色は土壌が酸性で青く中性からアルカリ性ではピンクになるそうですが、子供の頃学校で教えられたリトマス試験紙とは逆の反応を示すようです。
「廃屋のキョウチクトウ」:(2003.6.27)

隅田川にそって清洲橋近くまで歩いたところで見かけました。この家には人が住んでいるかもしれませんが、壁などの様子から廃屋と言う方が相応しい幹事のためこのようなタイトルにしました。キョウチクトウはまだ花がつき始めた感じで、その下にはフェニックスがキョウチクトウに多少遠慮するように葉を伸ばしています。
「ヤマフジの実」:(2003.6.29)

前回のこのページで紹介したヤマフジの実が、丁度2ヶ月たった現在このように鞘を被った豆上に吊り下がっています。鞘の長さは10〜15cmで、インゲン豆を少し寸胴にしたかんじです。花の状態では鶴に細かい房状に咲いているのに、実はおのおのの房に1個だけ付いているようです。すなわち1つの房に付いたたくさんの花のうち1個だけが受粉して実になるのか、もともと実になるべき花は1個しかないのか大いに興味を引くところです。

「薬仙寺の杉(可児市)」:(2003.7.5)

岐阜県可児市付近を通り抜けるのに普段は国道41号線を走りますが、この日は側道を走っていて発見しました。樹高は30mほどですが、2本が連れ添う夫婦のように並んでいるのが特徴のようです。梅雨の間でもあり薄日を受けた鮮やかな緑がこの2本の木を目立たせており、そのしたには薬仙寺の屋根が静かな佇まいを見せています。
「鳩吹山の麓・清流を見る」:(2003.7.5)

国道41号線が木曽川に近づいたところに清流を見ることができます。この場所左奥には海抜312mの鳩吹山があってここはその登山口になっているようです。周囲は緑に囲まれていて眺望は必ずしもよいとは思えませんがハイキングには相応しいようで、近くの空き地には10台以上の車が止まっていました。尤も推量が少ないので釣りには不向きかも。
「梅雨の七夕・立眠する男」:(2003.7.7)

夜の11時過ぎ名古屋駅前地下道で見かけた人物です。このあたりは夜になると数人の浮浪者が通路脇に寝そべっていることがありますが、このように器用に立って眠っているのを見たのは初めてです。着衣は多少汚れているもののほころびたりしていませんが、頭に巻きつけた日本手ぬぐいから日常生活のおよその察しが付きます。丁度七夕の夜で、立ったまま織姫とのデートの夢でも見ていればよいのですが。後方の名古屋駅前通りもかなり消灯されて暗くなっており、行き交う人もまばらといった感じでした。12時前にはシャッターが下りますので、彼らはいずれ休む場所を変えることになるでしょう。