「春は桜が主役だ、淡色(あわいろ)が良い」 (2004.5.15 掲載)

春を象徴する花は何と言っても桜でその淡い色は私たちの目をひきつけ、この時期だけに限ってあたかも自分の存在を誇示しているように感じさせます。私は今年も桜に誘われてあちこちの名所を訪れ、かなりの桜を描くことができました。特に今回は桜に隣接する建物などをモチーフとし、桜を脇役に仕立てて描くことに専念したつもりです。なお最後の2枚は桜とは異なった話題性のあるモチーフを取り上げてみました。

「上野公園・清水観音堂」:(2004.3.29)

3月下旬の東京は例年より半月ほど早く春が訪れ、あちこちの桜は満開です。この絵は昼休みを利用して出かけた上野公園での様子を描いたものです。平日の昼間というのに公園の桜並木の間には多くの花見客がひしめきながら歩いていました。上野公園では和風寺院建築は珍しく、桜に囲まれたこの清水観音堂にも多くの人が集まっているようです。

「神田川の桜・牛込橋より」:(2004.3.30)

牛込橋は神田川にかかり、神楽坂を下った所にあります。この絵は上流側の市ヶ谷か四谷方面にあるビル群をバックにして、川岸に張り付くように咲いた桜を描いたものです。ビル群の冷たいイメージ・桜の温かみ・神田川の穏やかな流れを組み合わせて表現して見ました。神田川にはこの他かなり多くの場所で同様の風景を目にすることが出来ます。

「桜花と中央快速電車」:(2004.3.30)

総武線飯田橋駅と並行して走っている中央快速電車を駅から土手の桜と対比させて描きました。電車の「動」に対するこじんまりした桜の「静」を表現したつもりです。電車が、桜の淡い色と土手の緑が告げている春の静けさを劈くように走り抜けていきます。またこれと並行して総武線の黄色い電車も走っていますが、タイミングよく描くことは出来ませんでした。
「岩倉駅前・桜満開」:(2004.4.1)

いよいよ4月に入って、ここの桜はバスなどの発着場が隣接しているため岩倉市内の他の場所より少し早めに満開になりました。桜の花は淡く柔らかな雰囲気を醸して、背景にあるモニュメントの直線とは好対照です。尤もこのモニュメントの由来については、長い間目にして来たものの知らないままです。

「橋と桜・九華公園にて」:(2004.4.1)

九華公園は桑名市の南部にあり、かって  城が築かれていた歴史的にも由緒ある場所で、お堀に囲まれた公園には多くの桜が植えられており、地元の人たちの憩いの場にもなっています。この日は天候がよく多くの花見客が訪れていました。またこの公園にあるいくつかの橋はいずれも鮮やかな朱色が施され、桜の淡い色とよく調和しています。
「桜満開の靖国神社にて」:(2004.4.2)

靖国神社境内の桜は九段坂に近い大鳥居付近に集中しています。この絵は神社側から見たもので、鳥居がかなり桜に覆い隠されています。また桜以外の樹木は新芽さえも出ていない感じで、これら樹木の下には花見客向けの屋台が所狭しと並んでおり、まだ真昼間というのにサラリーマン風の人達が缶ビールに口をつけていました。
「千鳥ヶ淵・ボートと桜」:(2004.4.2)

千鳥ヶ淵は東京の中心部で尤も有名な桜の名所です。昼休みを利用して出かけて何枚かを描きましたが、お濠に浮いる多くのボートと一艘だけ漕がれているボートを描いたこの絵がこの時期の良く表していると自負しています。今年の冬に描いた同じ位置での作品とは対照的です。
「迫間不動境内の桜を見る」:(2004.4.3)

迫間不動尊にお参りを始めてから4度目の春を迎えました。桜に注目しだしたのは一昨年からですが、坂道に沿って樹齢20から30年と思われる十数本の樹木が深い緑をバックにし、のぼりの旗ざおの青色を見下ろすように咲いている様子は見ごたえがあります。参拝に訪れる人達もしばし足を止めて桜に見入っており、静かな花見の風情が満喫できます。
「桜越しに美濃橋を望む」:(2004.4.3

美濃橋については前回のこのページで紹介していますが、その時には全く気が付かなかった桜との対照を発見しました。これは橋の手前にある桜の枝の間から橋を見たもので、花が余りにも近くのため思い切って個々の花を描くことにしました。橋を渡った向こう側でも1枚描きましたが、そちらでは小さなしだれ桜が1本あるだけで拍子抜けした次第です。
「花桃と桜・隅田公園にて」:(2004.4.5)

隅田川公園の桜がきれいだとのうわさを耳にし、さっそく出向いて何枚か描きました。ここはあまり広い公園ではないですが、このように花桃と桜が隣接した場所を見つけました。両方の花の色がうまく調和してアクセントをつけている感じです。そのはるか向こうに牛嶋神社というお宮さんがあり、ここも良いモチーフだったので1枚描きました。
「桜越しに言問橋を望む」:(2004.4.5)

言問橋は隅田川にかかり、浅草から真東に位置しています。隅田川の堤防沿いの満開の桜を通してみるこの橋はそれ自体あまり目立ちませんが、この日が快晴であったことも幸いして桜の淡い色を引き立たせていました。丁度春休み最後の時期で、このあたりは家族連れでにぎわっていました。
「桜越しに浅草寺を望む」:(2004.4.5)

浅草寺境内にはあまり多くの桜がありませんが、良いアングルで本殿を望む位置が見つかりました。淡い桜の色と本殿の暗い茶色の対照が印象的です。浅草寺では多くの作品を描いてきましたが今回はこのように新しいモチーフを発見した感じです。仲見世でも1枚描きましたがここでは桜はあまり目立つ存在でなく、印象の少ない絵になってしまいました。
「トンネルの向う桜満開」:(2004.4.6)

ドライブでひんぱんに通る長さ100mほどのトンネルは、入口(南)側と出口(北)側で全く景色が異なります。これは入口側を中から見たもので、入口が満開の桜で蓋されているような感じです。以前出口側を中から見た絵も描きましたが、この時は夏でサルビアが真っ赤な花をつけていました。

「日比谷公園・噴水元気」:(2004.4.22)

仕事のついでで久しぶりに日比谷公園に足を踏み入れました。周囲の緑はまだ淡く感じられるものの、昼休みの散歩を楽しむ人たちはカッターシャツを腕まくりして春陽を楽しんでいる様子でした。この噴水もそれに応えるように高くまで立ち昇り、周囲のビルを覆い隠すような印象を与えています。
「タンポポの変態」:(2004.4.23)

自宅隣りの駐車場には毎年冬を除いて多くのタンポポが咲きます。今は春咲きが終わりこのように綿帽子が着いています。大半はこんな感じで綿帽子自体もなくなったものもありますが、中にはまだ花をつけたものも見受けられます。まさに変態を目の当たりにすることが出来、面白いモチーフになりました。