「仲秋を楽しむ」(1998.11.30掲載)

今年の秋は9月下旬の相次ぐ台風の襲来と天候異変のため、桜の開花と紅葉の同時進行という異常な現象が見られました。私はこのような自然の活動に驚きかつ愉快に感じながら、あちこちに出かけて描くことを楽しみました。近くは岐阜県美濃市の長良川から、遠くは東京都内の名所旧跡巡りなどで結構バラエティーに富んだ題材に挑戦できました。11月のページとしてはいささか時期を失した感がありますが、内容的にはまあまあのページになったと思います。

美濃市・上有知(こううち)湊跡灯台:(1998.9.19)

岐阜県美濃市の小倉山のふもとに長良川に面して建てられています。この灯台は慶長6年(1601年)に建てられたものを復元したものですが、当時ここは江戸時代の美濃の国の4大湊の一つであったそうです。川の向こう岸から見ると小倉山」をバックになかなか落ち着いた風景ですが、その割には観光客らしき人は見られず、付近で釣り人がのんびりと糸を垂れておりました。
春分の日の雷門:(1998.9.23)

台風一過の東京地方は必ずしも秋晴れとはならなかったものの、この日は祭日でもあり週の中日というのに浅草は大変な人出で賑わっていました。雷門を描くことは私の長い間の希望でしたので人の動きなどにも気をとめながら描きあげたのがこの作品です。屋根の高さがやや小さく却って雷門の特徴である大ちょうちんが目立つ絵となりました。
浅草寺本堂:(1998.9.23)

上の絵のあと描いたものです。今まで寺院の絵はかなり手がけましたが、建物全体が朱色のものは案外少ないのでもう少し朱色の部分を強調しようと考えたものの、参拝客に隠されてしまった?ようです。よく考えてみると一般に寺院は境内に緑が多いのに、ここは松などの樹木が離れた場所に植えてあるためあまり目立たない絵になりました。
アサヒビールのシンボル:(1998.9.23)

隅田川の吾妻橋のすぐ上流東岸にあるこの巨大オブジエは、アサヒビール直営のビアホール屋上にあります。長さ44m、重さ360トンの鉄の塊で「炎のオブジエ」というのだそうです。これは9年前に作られたフランスの著名デザイナーの作品で、「新世紀にむけて躍進する会社の燃える心の炎」をイメージしたものとのこと。見方によっては尾篭な想像もない訳ではありませんが、江戸時代の雰囲気を残す浅草と、未来都市に足を踏み入れた気にさせるオブジエに高速道路にしゃれたビルなど、余り違和感を感じさせないという記事がある新聞に載っていましたので、ご参考まで。実は私の息子夫婦がこの会社にお世話になっていますので、序でながらご紹介まで。
渋谷モアイ:(1998.9.25)

JR渋谷駅西口の、地下鉄銀座線渋谷駅の真下近くにある石像で、高さは3m程でしょうか。渋谷駅前の像といえば忠犬ハチ公のほうが有名で、そこが待ち合わせ場所になっているのに対し、こちらの像は付近に樹木もなく暑い日光を浴びてどこかをにらんで?、人もあまり寄りつかない殺風景な感じです。この時はたまたま子供ずれのお母さんが花壇の花を見ていたので絵の端に加えてみました。コンテ鉛筆で描きましたがなかなか面白い作品になりました。
皇居東御苑・桜田二重櫓:(1998.9.28)

皇居東御苑は皇居の東側、旧江戸城の本丸・二の丸を中心とした地域です。この櫓は東御苑の南端の桔梗門近くにあり、別の資料によると巽櫓とも言われて」いるようです。私はこの櫓を桔梗濠の反対側から描いたので、この絵の奥まった所に桔梗門があります。また中央左の林の中の屋根は皇居の屋根ではないかと思います。
六義園・藤代峠より:(1998.10.15)

六義園は元禄15年(1702年)五代将軍徳川綱吉の時代に柳沢吉保が築園し、その後昭和13年東京都が当時の所有者岩崎弥太郎から寄付を受けたもので、国の特別名勝にも指定されています。面積は約88000平方mの「回遊式築山泉水庭園」で、園内にはこのように高い場所からほぼ全体を見渡せる場所があります。庭園の外部周辺に近代的なビル群があるため少し目障りですが。ここでの秋の紅葉はきれいなはずですが、まだ時期的に早すぎたようです。ウィークディでもあり、入園者もまばらでした。
六義園・老松:(1998.10.15)

六義園の中央の池のほとりにある数多くの松の中で、吹上浜という場所にあるひときわ目立つ松樹です。樹齢は100年以上でしょうが枝の格好が実に見事で、古木の品格を余すところなく表しています。全体の特徴を描くには用紙寸法が足りず残念です。この絵を描いている間に、車椅子に乗った老人を含むお年寄りのグループが、ボランティアらしき若い女性の介添えで通過したのが印象に残っています。
通草(あけび):(1998.10.17)

木通とも書くようです。妻が菜園をしている友人からいただいたものを賞味する前に描いてみました。しばらく冷蔵庫に入れておいたため少しつぼんだ状態ですが、本当はもっと開いたものを食べるのが普通です。中身は黒い小さな種を包んだ白色のゼリー風のものでほんのりした甘みが特徴ですが、種が多いので食べられる部分は非常に少ないです。子供の頃故郷(岐阜県)で学校からの帰路山に入って採って食べた記憶が、懐かしくよみがえってきました。
花水木の秋:(1998.10.20)

私が通勤する歩道に植えてある花水木の実を描いたものです。真っ赤な小さい実が光りを受けて可憐な姿を見せ、台風による強風でも散らずに残っている葉も紅葉が始まっていました。この木は花と葉が同系色で赤い花の咲く木の葉は赤っぽく、白い花をつける木の葉は緑色ですが、実だけはどちらも同じ赤色です。
飛騨金山・二見滝:(1998.10.31)

岐阜県の美濃と飛騨の境目あたりにある飛騨金山町は木曽川支流の美しい河川に恵まれています。この滝は「横谷峡の四つの滝」の一つです。この日私は妻とドライブしてこれら四つの滝を全部描くことができました。「二見滝」は下流から2番目で、名前の通り2段になっているのが特徴です。しかも上段から落ちた水は一旦小さな壷部分でよどんでから下段に落ちている感じです。滝壷の近くに天然記念物の「オオサンショウウオ」 2匹が飼育してあり、どちらかといえばグロテスクな外見であまり人気はなさそうでした。
飛騨金山・白滝:(1998.10.31)

「四つの滝」はそれぞれ個性的ですが、一番下流にあるこの滝は最もありふれた感じの滝です。本格的な紅葉には少し早かったものの、流れ落ちる水や少し色づき始めた木々を見ていると本当に心が落ち着きます。この辺りは私の中学生時代遠足で訪れたことがありますが、現在では観光開発のために整備されて、当時の面影はなくなっているように思います。またこの日に見かけた観光客は圧倒的に若いカップルが多く、しかもマナーが良かったのにはびっくりしました。